背に蟲

二十にもならぬうちに、背は弓の引き成りのように曲がっていった。伸ばせぬわけではなく病でもないが、胡坐をかき膝に肘立てじっと考えるか寝るか馴染んだ書き物を飽かず読むことを繰り返すうちに、そのようになった。背がよいあんばいに丸まると、そのまま十日でも二十日でも座り続けられそうにほっと居心地がよかった。いずれ、座れば顎が膝に付くほどに丸まるかもしれない。
農村でそのような腰をした年寄りは珍しくはない。悪いことではなかろう。年寄りと早く同じ姿になることが見苦しいものだろうか。
古木の枝の成りが真っ直ぐでないことがあたりまえであるように、それはあたりまえのことだったが、女はその成りを嫌った。ああまたそんな背をして、と必ず言い、息の吸い方が悪いのではないかと大真面目に言って、まるい背を上から下へ激しく擦った。背の山の頂を平手でドンと打つこともたびたびあった。終には、ああ見るのもいやだ、わたしはこれを見るのもいやなのだよ、背に蟲がいるとはよく言ったもの、と叫ぶように言った。