2010-01-03から1日間の記事一覧

狎れ

せむしは骸を見ること触れることを怖れる心を持っていたので、殺す意をもって人を打つところまでは平然と進んだが、相手が触れても温かくない骸になったところで窮した。まずは室を出て、次に家を出た。骸の在る室は鉢に思えた。室は他にもあるが、鉢を捨て…

骸を見ることが恐ろしい。大きな生き物ほど恐ろしい。動かないが動くかもしれないから恐ろしいのか、動かないうえにもうけして動かないから恐ろしいのか、わからない。骸と共に居ることより、それを見なければならないことが恐ろしい。むろん触れることは気…

鉢の魚

透きとおった大鉢に魚を泳がせて飼ったことがある。十日もたたないうちに、一匹がもろもろと砕けた腹を上にふわふわ浮いていた。 他の魚が死ぬのを待ち、すべて川に捨てた。鉢を洗い、鉢も捨てた。魚を鉢で飼うことはそれきりしなくなった。 死んでいる生き…