狎れ

せむしは骸を見ること触れることを怖れる心を持っていたので、殺す意をもって人を打つところまでは平然と進んだが、相手が触れても温かくない骸になったところで窮した。まずは室を出て、次に家を出た。骸の在る室は鉢に思えた。室は他にもあるが、鉢を捨てられず置き放しの家に居続けることは気味が悪かった。家は他には無い。
そのままにはできないが、と考えてみたが、考えて解ることではない。そのうち、これは狎れるしかない類のことと見切った。狎れた頃合いを見計らい、骸をどうにかすることにした。狎れぐあいによって運ぶ先が川になるか山になるか決まるであろう。
どうしても狎れなければ、誰かに知らせて運び去ってもらうしかないが。知らせるだけで用が済む者といったら、せむしには役人しか思い浮かばなかった。他に仕様がない。骸があまり砕けないうちに決めねばならぬだろう。