2010-01-05から1日間の記事一覧

邂逅

二輪の荷車に持って出る物をすべて積み、一番よい布団で覆って縄で巻いた。もう夜半だった。せむしは仕舞に庭の穴があったところへ行き、じっと見下ろした。眼を閉じた後の顔が浮かび、眼の開いた顔が浮かび、着物を被せる前の顔のはっきりしない骸が浮かん…

見て触れた後、せむしは相手を焼くより埋めてやりたくなった。焼き終えるまで立ち会えない。庭の隅に、野菜を筵にくるんで冬の間埋めておく大穴がある。女の着物から一番佳いものを見つくろい外衣のように着せてやり、相手を穴へと運んだ。土で穴を埋め、そ…

骸と鉢を忘れて居たのはほんの一時だったが、不思議にせむしの気分まで遷っていた。あれはまだ在ったのだった。どうでも触らければならぬなら陽が落ちる前がいい。遅くとも明日には造った荷とともに動きたい。 外の陽は傾きかけている。せむしは立ちあがり鉢…